「パウル・ザッヒャーの遺産シリーズ」Vol.3
2003年9月11日いずみホール
指揮/藤岡幸夫
管弦楽/関西フィルハーモニー管弦楽団(コンサートマスター/ギオルギ・バブアゼ)
プレトーク司会/西濱秀樹(関西フィルハーモニー管弦楽団事務局長)

西村朗/鳥のヘテロフォニー
オネゲル/交響曲第2番
シューベルト/交響曲第9(8)番「ザ・グレート」

「パウル・ザッヒャーの遺産シリーズ」は私は初めて行くシリーズです。
まず、開演20分前からプレトーク。詳細は今回のFROMMANCHESTERに譲ります。また、故渡邉暁雄氏から授けてもらった、現代音楽を演奏する意味についても一部話が出てきました。
それ以外に出た発言を補足します。何故いつもは吉松隆にこだわり、「パウル・ザッヒャーの遺産シリーズ」では吉松以外なのかという話。アンチ吉松&藤岡の皆さんはある意味藤岡さんに踊らされていた(?)のかも。「鳥のヘテロフォニー」については、メロディはないけれど「響き」の作りが素晴らしいという話、「現代音楽でここまでやれる」(可能性の極限に挑んだということ?)という話、「ある種現代音楽の決定版」という話など。西濱さんからはリハーサルの印象を「原始的」と形容。オネゲルについては、(この作曲家を関西フィルは第151回定期演奏会でとりあげています。)パイプオルガンの前にトランペットがひとり置かれる意味について(これ以外は弦楽しか 登場しない)の話、また作曲当時(1942年−昭和17年)の時代背景についての話、その時と同じ(何も進歩していない?)9.11からちょうど2年経ったこの日との関わりについての話がありました。「ザ・グレート」についてはマンチェスターでは古楽奏法にあわせてヴァイオリンの対向配置(指揮者の左側に第1ヴァイオリン、右側に第2ヴァイオリンが向かい合って並ぶこと)やノン・ヴィブラート奏法で行ったが、ハイドンはうまくいってもベートーヴェン以降はうまくいかなかった。今回は敢えて(古楽奏法を取り入れるとか楽譜絶対?原典?主義?ということ?)時代に逆行したアプローチを、ということだそうです。なお、「空気がシリアス」と冒頭に藤岡さんは言っておられましたが、場内からはいつもより控えめながら笑いが出ていました。

・西村朗/鳥のヘテロフォニー 吉松隆でなくてももちろんレスピーギでなくても「鳥」。アドレナリンが流れますよとは藤岡さんのプレトークでの言。その言葉は本当です。曲は確かに現代音楽の決定版かも。
クラシックではない(もちろん西村朗の曲ではない)ですが山海塾向けだったかな…、その辺でシンセサイザーとパーカッションを使った曲を聴いたことがあるのですが、それから少し丸みを持たせた曲というところでしょうか。吉松隆とは非常に大ざっぱにしか共通項を持たせられないかも。プレトークではさらに太陽の声、水の流れ…と具象的なイメージが語られましたが、私にはそこまでイメージは出来なかったです。でも聴ける曲です。

・オネゲル/交響曲第2番
こちらは逆にあんまりアドレナリンは流れませんでした。第3楽章のトランペットを除けば楽しくはない曲ですが関フィルの弦の力もあって飽きずに聴けました。

・シューベルト/交響曲第9(8)番「ザ・グレート」
これは素晴らしい演奏でした。最初はゆっくりと途中からは加速と減速を必要に応じて。オーケストラのついて行き方も素晴らしく、堂々たる風格すら見えてきます。 飯守泰次郎さん(関フィル常任指揮者)と比較して、格の違いとか揶揄のようなこと(おいおいおい)を書いてきましたが、藤岡さんはある意味初めて斜め後ろ(別の経験と アプローチ…というか真後ろだとこの場合良くないと思う)から飯守さんの燕尾服をつかんだのかも。終演後にはそのうち自分はフェリックス・ワインガルトナー(ザッ ヒャーの師、ベートーヴェンの演奏に大きな影響を与えた指揮者(ながら現在はあまりかえりみられていないかも…))に向かうんじゃないかといった発言も。大阪にもロ マン派に古楽奏法を思いきり持ちこむ指揮者もいれば、あえてその反対を進む指揮者もあり、ですね。ちなみに握手を頂いた藤岡さんの手は大汗でした。


追記:この翌日(9月12日)には同じくパウル・ザッヒャーの委嘱作品であるバルトークの「ディヴェルティメント(弦楽のための)Sz.113」が大植英次指揮、大阪フィルの演奏でとりあげられています。某有名サイトの記録を見ると「パウル・ザッヒャーの遺産シリーズVol.1」でとりあげられている様な気がします。大阪シンフォニカーも年に1曲ザッヒャーの遺産をとりあげるようでザッヒャーの共鳴としてはいいことでしょうね。



          2003年9月12日  Fu(ふ)




いつも詳細な報告ありがとうございます。
ワインガルトナーの方向には行かないでしょう(笑)。
あれは冗談です。








藤岡幸夫

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