<特別寄稿:公演裏話〜レコーディングは熱い戦い〜>
ジャパンアーツの藤岡さんのマネージャーである大沼さんから、
特別に裏話を聞かせていただきました。
|
昨年12月に、シャンドスというレコード会社が作曲家の吉松隆さんの新作「交響曲第3番op.75」と「サイバーバード協奏曲」を録音することになりました。
オーケストラはマンチェスターのBBCフィルハーモニック・オーケストラ、指揮は藤岡幸夫氏、プロデューサーはシャンドスの社長が自ら務めます。
まず「サイバーバード協奏曲」から収録が始まりました。この曲はサキソフォーンの名手である須川展也氏のために書かれた曲で既に別のレーベルからCDも出されていますが、その作品を聞いたシャンドスの社長が聞き惚れてそれがきっかけで吉松さんをシャンドスの契約作曲家として契約する話が決まった、というのは有名な話です。
今回もソリストを務めた須川氏は当然ながら熱演で、現場はさながらジャズのセッションのよう。でもオーケストラも指揮者もソリストたちもプロデューサーも最高のものを求めるため、妥協は許しません。最後にみんなが満足の行くテイクが取れるまで火花が散らされます。
続いて今回の目玉である「交響曲第3番」の録音です。この演奏はもちろん世界初演となります。藤岡氏の気合の入れ方は相当なものでした。録音が進む中、それまではどちらかというと演奏家にまかせてあまり口を挿まなかった吉松氏がはっきりと「ノー!」と不満足な様子。
なんでもこの曲の最後には、完全にオーケストラが崩壊してキレてほしい、とのこと。
合奏の指揮者は通常演奏を「まとめる」ために必要なのだが、「キレ」て欲しい、という要求は一体どうしたらオーケストラに伝えたものだろうか、と考える藤岡氏。そしてついに彼は、「マニアック」(キチガイのように!)という単語を叫びました。
ところがイギリス人たちは「マニック?オー、マニック」と妙に納得した様子。録音ブースの中で私は密かに「マニックじゃなくて彼はマニアックといっているのに。。。」と心配しておりましたが、最後のテイクはオーケストラのテンションも絶頂に達し、キレまくって無事終了!
そしてこの初演の成功をたたえて、吉松氏はこの「交響曲第3番」を藤岡氏に献呈されました。
後で分かった事ですが、マニックという単語は医学用語で「そう病患者」のことをさすのだそうです。…英語って奥が深いですね・・・。
|
|
写真は録音前後の、プライベートの写真です。
みなさんの充実した表情に、今回の録音の大成功があらわれていると思います。
|