藤岡さんから2003年、5通目のお手紙が、前回に引き続きオーストラリアから届きました。
オーストラリアのコンサートの内容を詳しく伝えて頂いております。
今回は写真も8枚とたくさんで見ごたえがありますよ!
もちろん大きなJPEG写真にリンクしてあります。お楽しみ下さいね。 感想のメールもお待ちしています。

 皆さんこんにちは。今オーストラリアのパースにいます。
昨日2日目のコンサートが終わったところ。プログラムはコダーイの「ガランタ舞曲」、バルトークのピアノ協奏曲2番、メインがラフマニノフの交響曲3番。

 
バルトークはオーストラリアのスター、マイケル・ハービィ。彼とはこの同じバルトークを去年クィーンズランドで共演してる。前回は悔いが残ったんで今回もう一度やりたかったんだそうだ。

この曲はハーモニー、リズム、オーケストレーション全て魔物のようだ。2楽章の中間部の闇の世界、3楽章の異常なまでの野性的なリズムとスリル。知らない人は一度聴いてみる価値大。

ラフマニノフの3番は本当に素晴らしい名曲。ただし最後の2分を除いて・・・・・。とにかくこの曲はエンディングだけがイマイチなのが本当に残念。
それだけであまり演奏されない気がする。2番は有名だけど3番の方がずっと深い。

前にも書いたけど、交響曲の終わりって作曲するのは難しいらしい。終りは良くないが1・2・3楽章葉最高っていう曲は結構ある。
小説やドラマ、映画も終わりが難しい。最後でなんだよこれ?っていう事はよくあるし、逆にエンディングが素晴らしいと前半が多少つまらなくても心に残ったりするものだ。

とにかくこのラフマニノフは本当に素敵な曲だけにちょっと悔しい・・・・・・でもまた振りたい。

コダーイを振るのは本当に久しぶり。この曲にはマンチェスターで音大生のころ、シェフィールド・ユースオーケストラと夏にドイツに演奏旅行した思いでがある。移動は全部バスで宿泊もホームスティ。楽しかったなぁ。最後にお互いお別れするときは皆ウブで別れたくないって泣いてた。この曲はそれ以来で懐かしかった。(それにしても今回はこの曲を1stヴァイオリン16型でやったもんだからすげぇ音がしてた)。


ところでここパースのウェスタン・オーストラリア交響楽団は今回で3回目。以前も書いたけどロンドンの5大オケで弾いてたプレーヤーが多くて(パースはオーストラリアで最もイギリスからの移住者が多いプライドの高い街)、イギリスのオケの雰囲気がある。弦楽器の前列はウルサイおじさん達が自分のパートを完璧にしきってるからこっちは楽だし勉強になる。この人達はとにかく周りの音を本当に良く聴いて合わせるからアンサンブルがいい。 またオケの経済的状況も良く、コンマスのダニエルのほか素晴らしいプレーヤーも増えて本当にいいオケになってる。

それからパースは人口が130万人なのにコンサートが本当に多い。ここのオケはほとんど毎週末にコンサートして、その他オペラ・バレエのピットにも入る(年に17週間も)。
また同じプログラムで2日あるいは3日とコンサートをするから(しかも同じホールで)、オケも上手くなるし、経済的だ。 コンサートが多い=チケットが安くなる=お客さんが増える すごくいい環境だと思う。 それに必ずFMで全国放送される。(これはオーストラリアのどのオケも同じ)。だから皆他のオケがどんな演奏してるか分かるし刺激になる。

ホール前の広場。向こう側に見えるのは街の中心を走るスワン川。その名の通り白鳥をはじめとする鳥が沢山いる。

ホールの正面。天気にいい日はオープンカフェになってる。

オーストライアで1番といわれるコンサートホール。音響は本当に素晴らしい。ステージを客席が囲むスタイルで1700席の調度いいヨーロッパサイズ。

以前も紹介したオケでチェロを弾く小松さんと次男んのセバスちゃんが部屋に遊びにくる。今回もすごくお世話になった。料理が上手で今回もお手製の白菜の漬物、つくだに、かつおのたたきなどをさしいれてくれた。ありがとうございました。

本番後はプレーヤーと飲むことはあるが、めずらしくリハーサルの後にプレーヤーと一杯やる。向かって僕の左がコンマスのダニエル。まだ24歳のロシア系ユダヤ人。(前回僕が振ったとき前日に突然ソリストがキャンセルして、代役でショーソンの詩曲とラヴェルのツィガ−ヌを暗譜で軽々と弾いてのける)。ソロの腕前だけでなくコンマスのセンス抜群。弦楽器群を遠慮無くしごく。

チェロの首席の大好きなロッド。オケ内に沢山いるイギリス人の一人。19才でロンドンフィルに入団して以来ずっと同オケのチェロの首席をつとめた有名な人。僕の音大時代にハレ管にひっこ抜かれてマンチェスターにやってきたものの、イギリスのくそ忙しいオケマン生活にイヤケがさしてパースに来て7年目。とにかく素晴らしいプレーヤー。


 来週はここでラヴェルの「マ・メール・ロア」、プーランクの「オルガン協奏曲」にサンサーンスの3番。本番は今度は3日間。

言い忘れたけどオーストラリアで一番といわれるここのコンサートホールの音響は素晴らしい。
リハーサルの2日めからこのホールで練習出来るのも嬉しい。団員も以前紹介した日本人の小松さんがいたり、ロシア、ポーランド、ハンガリー、イスラエル、etc外国人が沢山いて面白いし、すごく楽しい。

というわけでここで最後のコンサートが終わった夜、関西へ直行します。そろそろ関西が恋しい・・・・!
この前の関西フィルとのハイドン・シリーズは久しぶりだったけど、かなり僕達のハイドンのスタイルが出来てきたと思う。例えばヴィブラートに関しては、(木管楽器も含め)ノン・ヴィブラートの箇所もかなり多いけど、そうでないところのヴィブラートかけ方やアーテキュレーションもアンティークな響きを保てるようになってきたと思う。

急遽8月にも今年2回目のハイドンシリーズをすることになったので詳細は近々に発表します。 

それではチャオ!

      2003年7月1日

PS1 関西といえば阪神強い!僕はライオンズファンだけど、関西フィルと仕事をするようになって今ではセリーグでは阪神ファンだ。(「にわか」がつきますけどね)。この前は試合の行方が気になって、小学生以来30年ぶりに枕元にラジオを置いてナイターを聞きながら寝た。それにしても目を閉じてラジオの試合中継を聞くのっていいなぁ。アナウンサーはやたら熱いし、ワクワクする・・・・けど良く眠れる。

PS2 最近ベッカムのおかげで良く見かけるマンチェスター・ユナイテッドの赤いユニフォーム。つい最近まで「SHARP」のロゴが入っていたのだ。シャープはこのチームが2部リーグで低迷してたころからスポンサーをしてた。僕がマンチェスターに留学したときは、すでにマン・Uは黄金期に入っていて強い強い。プレーヤー達の胸に輝くこの日本企業のロゴにすごく勇気ずけられた。

PS3 6月の僕の誕生日、生まれてはじめてビックリ・パーティをしてくれた。大学生時代からの親友達が全員こっそり集まってくれたのだ。(皆忙しくて一人も欠かさず集まったのは学生時代以来)。お互いなかなか会えなくても、僕は彼等の存在のおかげで精神的にどれだけ助けられてることか!嬉しかった。

PS 4 サンサーンスの3番の本番の3回目は特に熱かった。僕にとってこの曲は3回同じなんてありえない。この曲は以外にもどっしりとした構成感が魅力。でも最後の演奏会は崩壊ギリギリで緊張感をつくりたかった。チェロのロッドに本番前「今日は違うよ」と一言いっただけで、「今日のサチオはこことここがきっと早いからしっかりついていくように」と他のプレーヤーに指示が出てたそうだ。その辺の読みは見事。この曲の1楽章の後半は確かに美しいし毎回お客さんは熱狂するけど、あーぁ、ラフマニノフの3番の方がずっと深い曲なのになぁ。

PS5 サンサーンスに比べてラヴェルはなんの小細工も要らない。この曲を初めて勉強したときグローブスとティムは同じ事を言ってた。「スコアじゃなくてオリジナルをピアノで連弾しよう」。このオリジナルは本当に素晴らしい。それに加えられた魔法のようなオーケストレーション。僕はラヴェルの中でこれと「高貴で優雅な感傷的ワルツ」が最高傑作だと思う。 ヨーロッパ系のオーケストラの弦楽器はボウイングや弾く弓のポジションのひきだしを沢山持ってるからリハーサルにたっぷり時間をかけて繊細な音作りをめざした。 この曲は本当に何度振っても飽きない。

PS5 さてパースの本番後、飛行機を乗り継いで大阪入り。大阪に飛行機で来るのははじめて。窓から練習場のあるオークのビルが見えて思わず「帰ってきた・・・・・!」とつぶやく。嬉しかった。

   
※本ページの写真は藤岡さんのプライベート写真です。
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