藤岡さんから、2006年の2
目のお手紙が届きました。
チャイコフスキー交響曲第6番ロ短調「悲愴」の想い出
です。
今回の写真は、ケータイで撮影された藤岡さんとヤブロンスキー氏のお写真です。拡大写真が無く、更にケータイの写真はちょっと小さめ+画像が粗めですがお許し下さいませ。
皆様のご感想のメールもお待ちしています。


皆さんこんにちは。

昨日は関西フィルと「Meet the Classic Vol.12」で「悲愴」他のオールチャイコフスキー・プロ。

僕が関西フィルに来て、まず最初に始めたこのシリーズも12回目。昨日も完売。関西フィルの毎回熱のこもった素晴らしい演奏のおかげもあって、沢山の新しいクラシックファンが生まれてきたと自負してる。

昨日のメインは交響曲6番「悲愴」。この曲にはいろんな思い出がある。関西フィルとの初共演の定期もこの「悲愴」だったし、ヨーロッパデヴューもこの曲だった。

93年、当時僕はイギリスで音大3年目。まだプロのオーケストラの演奏会を指揮したことがなかった。

BBCフィルハーモニックの演奏会の指揮者が急病になって、代役で僕が選ばれた。そのときのメインが「悲愴」だった。(BBCフィルはロジェストヴェンスキーの代理でマーラーの「復活」のリハーサルを指揮したことがあって、その時うまくいったので代役に選ばれた)。

定期演奏会だったし全国放送される演奏会で、オケにとっては大きな賭けだった。

BBCフィルは若い指揮者に厳しいのが有名で、リハーサル初日のしょっぱなから、僕の注文に熟練の首席奏者が反論してきた。

「俺はカラヤン(有名な大指揮者)でもこの曲を弾いてるし、今までずっとこのやり方でやってきてるんだ。」

青二才の僕は、思わず

「わかりました・・・・・」

休憩時間に、僕を推薦してくれた団員さん達が僕の部屋に怒鳴り込みにきた。

「Who are you !! (お前は誰だ!!)」

「お前はカラヤンじゃない!サチオ・フジオカだろ!!あんなこと言われて引き下がるな!」

「お前に強い思いがないからひるむんだ!!」


今でもその怒鳴り声が耳に焼き付いている。指揮者の極意は「思う」ことにある。

「自分は絶対こうだ!」という心底強い思いと自信があれば100人の団員は動く。
「思い」が甘ければ迷う。迷う人間には誰もついてこない。
 

この時は、彼らの言葉のおかげで僕は開き直って、演奏会は大成功。次の年から副指揮者に就任して、以後3年間沢山のチャンスをもらい本当に可愛いがってくれて僕を育ててくれた。


でもこの「思うこと」は言うのは簡単だけど、難しい。
指揮してみなきゃわからないことも沢山ある。
正直に言って、デヴューしてからも迷うことが多かったと思う。経験がどうしても必要なのだ。
やっと迷わなくなったのはこの数年くらいからかもしれない。

あれから何度も「悲愴」を振ってるけど、必ず
「Who are you !! 」
が聞こえてくる。
僕を初心に帰らせてくれるという意味でも大切な交響曲だ。

それでは皆さん、コンサートでまたお会いしましょう!!

2006年3月6日





 
ピアニストのヤブロンスキーと、以前紹介した新地の焼き肉屋さんで飲む。明るくてチャーミングで謙虚。一流芸術家は人間も 一流だ。

 

PS1 去年スウェーデンで共演して仲良しになったピアニストのヤブロンスキーから、日本にいるからと連絡があって一緒に飲みに行って楽しかった!スウェーデンで飲んだとき、僕が彼に指揮者になれよと散々薦めたのだけど(彼にはその資質があると僕は信じてる)、今回会ったら彼も本気になって考え始めてた。
飲んでる間、アホな会話をしながらも二人で彼の指揮を始めるにあたってのレパートリーを真剣に相談した。僕も彼もハイドンが大好きなのでまずはハイドンから。さてどうなることやら・・・・。

PS2 トリノオリンピックのフィギア。僕は村主さんの演技に本当に感動してた。他のスケーターの演技を見てるとスポーツなんだなぁと思うけど、彼女の演技は芸術だ。確かに運動能力が劣る分ワザで差をつけられたけど、彼女のシルエットの美しさと、見事に表現される内からこみ上げる情熱に僕は息を呑んだ。深みのある滑りだったと思う。

PS3 以前にも話した、僕の姪っ子三姉妹。フィギアでオリンピックを目指してる。上から小4、小2、年長。かなり有望なようで、先日、朝7時半に1分間だけだけどテレビで紹介されたのだ!僕の指揮した音楽で彼女達がオリンピックで滑るのを楽しみにしてる。

PS4 昨日のいずみホール。毎回指揮するたびにその音響の素晴らしさに感激。言われてから気がついたけど、シートの張替えなので音がさらに良くなった!

PS5 今月の28日は神戸の松方ホールでベートーヴェンの「英雄」。関西フィルとはこの数年毎年取り上げてるので随分練りあがってきてる。ホールもロビーがガラス張りで、神戸の港を見下ろせるステキな空間!お楽しみに!!

 

※本ページの写真は藤岡さんのプライベート写真です。
 
無断転用はお断り致します。


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