藤岡さんから2003年、8通目のお手紙が届きました。
今回は、イギリスでの吉松さんの新作「チェロ協奏曲」他レコーディングのお話や、年末に向けてのコンサートにかける思いをお届け頂きました。更に今回はプライベート写真も5枚と大充実。皆様のご感想のメールもお待ちしています。

 皆さんこんにちは。
イギリスでのレコーディングが終わり、日本に向かう飛行機の中です。 

 今日は11月6日。実は僕にとってちょっと特別な日だ。ちょうど10年前の11月6日、僕はイギリスでBBCフィルの定期演奏会でプロ・デヴューした。まだ音大の大学院生で留学して3年目。急病のサー・エドワード・ダウンズの代役だった。この年の5月にロジェストヴェンスキーの代役でマーラーの2番のリハーサルを1日任せられたのが上手くいって、定期演奏会という最高の舞台でデヴューさせてもらった。
 演奏会後、すぐに副指揮者というポジションを新しく作ってくれて就任、以前から僕に興味をもってくれてたニックが正式に僕のジェネラル・マネージャーになってくれた。

 あれから10年。なんだか20年くらい昔のような気がするし、あっという間のような気もする。
 僕は派手に見られるけど、昔から何でもゆっくり物事が進むタイプ。デヴューしたのも31歳と遅いほうだし、これまでもゆっくり自分のやりたい事をやってきた。この先50歳の時、何をしてるかが勝負だと思ってる。


 僕にとって、10年目の節目をデヴューさせてくれたBBCフィルと仕事ができて楽しかったー。本当に彼等には可愛がってもらった。今でも全てのメンバーとファースト・ネームで呼び合う。そして吉松さんとのCDももう7枚目。


 まずは「チェロ協奏曲」。
関西フィル初演と日フィルとの演奏会後、一足先に戻ったピートは絶好調。初演に比べてさすがに余裕が出てきて、このとんでもなく難しいチェロ・パートを生き生きと弾きこなす。余裕がある分音量もアップ。それにしてもピートの音色はノーブル&セクシーだ。吉松さんも見事にピートの素晴らしさを引き出してる。曲の説明は前回したのでここでは省くけど傑作です。是非聴いて欲しい。

 2曲目は吉松作品初期の「鳥たちの時代」。
この録音は気持ちよかったー!指揮しながらこんな気分になれるなんてめったにない。テイクを重ねる事にメンバーが曲に引き込まれていくのをダイレクトに感じる。 オケは歌い、鳴き、踊り、叫ぶ。1楽章の終わりで噴出する11小節のメロディに説明は要らなかったし、2楽章はアルト・フルートが妖艶に踊りだす。3楽章の最後では、美しい鳥たちが夕陽に染まる大空を舞う。 


 3曲目のチカプは初演。
昔フルート・オケに書かれたモノを管弦楽に吉松さんが編曲。最初リハーサルで通したときは、こりゃダメだということになって、吉松さんが弦楽器を全編ソルディーノ(消音器付き)に変更。突然ラヴェル風の素晴らしい曲に激変。

今回録音していて、休憩中にあっちこっちからプレーヤーの「ヨシマツ イズ ファンタスティック!」の声がきこえてくる。

とにかく自信作。 お楽しみに!

マンチェスターのタウン・ホール。BBCはここのホールでコンサートもする。

こちらは街にある図書館。
学生時代は良くCDを借りに来た。

録音終了して一杯やる、吉松さんと、ここのオケでファースト・ヴァイオリンのピートの奥さん。

こちらはピートと僕。

我が家のリヴィングからのなんでもない風景。
でも空が広く落ち着く。


 今週末は高松で例年の第九(オケは勿論関西フィル)。全国から集まる500人の大合唱団。レヴェルも高いし終わった後がスゴイ。来週は初顔合わせのニューフィル千葉の定期でオール・ベートーヴェン、再来週は関西フィルと神戸でチャイコフスキーの4番とピアソラ。4番は2年前の関西フィルとの演奏に自分自身に悔いが残ってるので再挑戦。12月は日フィルと今年3度目の演奏旅行でスタート、東北へ。12月の青森!ひゃー!雪大丈夫かな?

それでは皆さんコンサートでお会いしましょう!


      2003年11月11日

PS1 去年から海外の仕事はマンチェスターを経由する余裕が全くなかったので、マンチェスターの我が家に戻ったのはなんと1年半振り!
実は僕は海外にいるときすぐジャパン・シックにかかる。とにかく日本が恋しくてしょうがないのだ。留学当初、2年半も日本に帰らなかったときは死にそうだった。ただ今回は違った。自分のアパートに戻って嬉しさが込み上げる。もっとゆっくりしたかった。ちなみに今でも僕の楽譜は全てマンチェスターにあるし、本当の意味での仕事部屋はここだ。ニックと相談して来年からまた少しづつ海外の比重を増やすのでまた帰るのが楽しみ。

PS2 マンチェスターで久しぶりに愛車のコンバーチブルを運転する。この車、もともとは妹夫婦の愛車で8年前にシンガーポールに引っ越す妹達から買い取った。僕がマンチェスターにいない間は自動車修理工場のショージャが面倒を見てくれてる。久々に再会した愛車のコンディションは最高!日本にもこれだけ面倒見てくれる友達がいたらなぁ。

PS3 東京で吉松さんのチェロ協奏曲を演奏したときの日フィルのゲストコンマスのデヴィッド・ノーラン(現在読響のコンマス、ロンドンフィルやフィルハーモニアのコンマスを歴任)は
実は僕の最初のチャンドスのCD(吉松さんの2番ほか)の時のBBCフィルのゲスト・コンマス。このときディヴィッドは吉松さんをいたく気にいってギターを弾く甥っ子にこのCDをプレゼントしたそうだ。その後もBBCで何度も彼と仕事してた。でも、僕もピートもリハーサルが始まるまで彼が今回のコンマスだとは知らず、3人の嬉しい再会だった。しかし3番の日フィルの尋常じゃない演奏は作曲家にとって最高の喜びでしょう。ありがとうございました。

PS4 いまや僕はどこにいてもすぐ大阪が恋しくなるし、本当に関西と関西フィルが大好きだ。でも日本シリーズはダイエーを応援してしまった。こればっかりは・・・・・ごめんなさい。やっぱり野球はライオンズのパ・リーグが好き!

PS5 小久保とローズが巨人に行くって?冗談じゃねぇ。パ・リーグはいったい何を考えてんだ!?

PS6 一昨日(9日)高松で今年最初の第九を振ってきた。それにしても毎年この合唱団には驚かされる。魔女(失礼!)のようなカリスマ性を持つ中西女史が陣頭指揮をとり、下は幼稚園生から中高生、上はかなり(これまた失礼)の年齢の方達、また香川県だけでなく北は北海道、南は沖縄から第九好きが集まり500人近くの大合唱団になる、素晴らしい音楽祭。今年は17回目だそうだ。永遠に続けて欲しい。

PS7 相変わらず超多忙な関西フィル。とんでもないスケジュールをこなして高松入り。それでも疲れを感じさせない集中度の高い演奏に本当に頭が下がった。ありがとうござういました。


※本ページの写真は藤岡さんのプライベート写真です。
 
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〜藤岡幸夫さんを応援するWEBの会より〜
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