ソリストのピートは大学卒業してすぐロイヤ・ルフィルのトップ奏者になり、その後BBCフィルに移籍してきた。BBC
フィルのリーダー的存在。学生時代はソリスト・スター街道を走ると思われてきたけど、とにかくオケが好きでオケマンの道を選んだプレーヤー。その情熱的な演奏は甘いマスクと伴ってファンも多い。彼と僕は同い年で音楽の趣味も合うのですごく仲がいい。彼もこの曲に大喜び。初めてこの曲を手にして興奮して電話してきたくらいだ。
20日の関西フィルの定期では後半はシベリウスの2番を取り上げる。僕の愛して止まない特別の曲だ。またこの曲は僕の恩師、渡邊先生の十八番だった。フィンランドの血が半分流れる先生のシベリウスは本当に素晴らしかった。僕が弟子になりたての頃、先生は日フィルとの演奏旅行ではいつもこの2番を取り上げてた。僕は荷物持ちでいつも先生と一緒で、それは沢山の事を教えていただいた。
弟子になって最初の先生の日フィルとの演奏旅行直前に「酒癖が悪くて暴れん坊、その反面すごく優しくて心から祖国を愛したのがシベリウス。キミも2番好きだよな。この旅行で一緒に勉強しよう。キミにも振れる時がきっとくるよ。2番のシベリウスの手書きの最初のスコアはね、ロシアへの怒りと祖国への情熱で音符が書きなぐられてるんだ。そのインクがまるでまだ乾いていないような音楽を目指しなさい。」そう言って、先生がアメリカでのコンサートで使った2番のスコアをプレゼントして下さった。
関西フィルでこの曲を振るのは初めてなのですごく楽しみ。20日は、たった今書きあげられたような新鮮なシベリウスを目指します。
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撮影:設楽茂男
写真提供:
「メンズクラブ・ドルソ」
99年秋号/
アシェット婦人画報社刊」
無断転載をお断りします。
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