藤岡さんから2003年、4通目のお手紙がオーストラリアのメルボルンから届きました。
先週と今週のコンサートの内容や懐かしい恩師、友人達との再会など益々充実されているようです。
今回は写真も7枚とたくさんで見ごたえがありますよ!
もちろん大きなJPEG写真にリンクしてあります。お楽しみ下さいね。 感想のメールもお待ちしています。

 皆さんこんにちは。今オーストラリアのメルボルンにいます。
先週と今週にコンサートがあって、今一息ついてるところ。

 コンサートの話の前にまずアンクル・トレバー(トレバーおじさん)の話。何故なら彼がいたおかげでヨーロッパでキャリアを踏めるようになったからで、その彼に7年振りの再会が出来たからだ。

トレバ―は今はメルボルン響のボス。僕が初めて会ったのは93年の1月のオーストラリアでのミュージックキャンプ(オーストラリア全土+シンガポール他、アジアの若い音楽家の卵を集めて3週間みっちり有名なプレーヤーがしごく)。ここで僕は3つ編成されてるオケの1つを任された。当時イギリスでBBC・ノースのオケを含む音楽部門のトップだったトレバー(もともとイギリス人)はすごく僕を気にいってくれてキャンプ終了後、すぐにBBCフィルを振る機会を作ってくれた。

 彼がつくってくれたチャンスは、リハーサル嫌いなロジェストヴェんスキーの代わりにマーラーの2番をリハーサルするというもので、しかも彼がロンドンのマネージャー達に僕の宣伝をしてくれたおかげで幾つかのエージェントが見学しに来てくれた。(勿論、現在のマネージャーのニックもその一人)。

 このリハが上手くいったおかげでその年の11月には定期演奏会でデヴューさせてくれて、次の年から副指揮者に。以降ロンドンデヴュー、ショルティのアシスタント、CD録音他沢山のチャンスをくれた。特にショルティの場合はアシスタントだけでなく彼の家に行ってレッスンしてもらえるようにしてくれたり、ショルティが来る一週間前に全く同じプログラムの放送録音(これがどんなに勉強になったか言葉ではいい尽くせない)させてくれたり、本当に素晴らしいチャンスをくれた。以前紹介した当時トレバーの右腕だったアンクル・ブライアンとともにいつも僕のことを気にかけてくれてた。

 トレバーおじさんはその後奥さんがオーストラリア人であるという関係でオーストラリアに戻ってきてて、7年振りにやっと会えたわけだ。

 僕がメルボルンに到着した日、早速ホテルに電話をかけてきてくれて、「明後日のリハまで待ちきれないから、明日一緒に朝飯を食おう」というわけで次の日、朝8時に再会。本当に嬉しかった。彼がはじめてマーラーのリハのチャンスをくれたのが今からちょうど10年前の93年の5月。とにかく色んな話しをして、勿論リハーサルとコンサートにも来てくれて、オトナになったとすごく喜んでくれた。コンサート後夕飯を食べたり、休憩のお茶を一緒にしたり・・・・。今も昼食を一緒にしてきたところ。今日は今後の僕の進むべき道について熱心にアドヴァイスをくれた。本当にありがたいことだ。これからはもう少し彼とはひんぱんに会えそうなので楽しみにしてる。

 それともう一人、音楽大学で指揮科で一年上(年は3つ下)だったブラッドに偶然再会できた。彼は僕のコンサートの日に隣のオペラハウスでカルメンを振ってたのだ。ビックリ!
オックフォード卒の秀才。優秀なオルガニストでもある。音大を卒業してから彼は引っ越したりして連絡が途絶えてた。彼もロンドンフィルでデビューしたり、北欧、ドイツと活躍の場を広げてる。本当に嬉しい。学生時代は僕とポール(まだ紹介したこと無い?)と、このブラッドが指揮科の3人組で各学年一人しかいなかったのでいつもつるんで論争をしたり、パーティをしたりして騒いでた。(ついでに自慢しちゃうと3人とも奨学金特待生で、同じ科から3年連続は珍しかった)。お互いのコンサートの次の日一緒に中華街でランチ。話題はつきなかった。今日はこれから彼のカルメンを観にいくつもり。

某僕の右隣がアンクル・トレバ―、その右がジョナサン、左の女性はシボーン。彼女はシドニーにいてオーストラリアに呼ぶアーティストを決める責任者。旦那のデイヴィッドも同じ仕事をしていて、初めて会ったときから夫婦で気にいってくれて今回もコンサートに来てくれた。

ブラッドと7年振りの再会。楽しかったー。

滞在した部屋。オーストラリアはどこにいっても部屋が広いの出気持ちがいい。勉強もはかどる。夜はすること無いので毎晩8時には寝てた。

Town Hallの外観。
イギリスを思い出させる立派な建物。

Town Hallの中。約1800席。音響もすごくいい。

こちらは、ロッシーニを振ったメルボルン・コンサートホール。ステージを囲む感じで客席があるタイプ。
オケの本拠地。

ホテルの目の前は公園。
メルボルンは珍しく四季がはっきりしている。今は秋。


 というわけで、まずプログラムは先週がイギリス人の作曲家バークレイの交響曲3番(オーストラリア初演)、イギリスでいま人気急上昇のピアニスト、ポール・ルイスとベートーヴェンの4番、それにラフマニノフの交響的舞曲、今週がメルボルン響合唱団が加わってヴェルディのスタバト・マーテルに吉松さんの鳥は静かに、武満さんのレクィエム後半はロッシーニのスタバト・マーテル。 曲目が多くて結構大変だった。

オケのメルボルン響は今オーストラリアでは一番と言われてるだけあって、バランスのとれたいいオケだった。(日本では70−80年代に岩城先生が手塩をかけて育てたオケとして知られてる)。半分はロシア、イスラエル、ポーランドやアジアからの外国人で国際色豊か。とにかくみんな明るくて練習してても楽しい。

先週のコンサートはTown Hall のシリーズでここは古くて素晴らしいホール。お客さんも満員。以前も書いたけど、やっぱりラフマニノフは何度振っても曲に感動を覚える。オケも完璧にスィッチON。本番まで見せなかったテンポに見事についてきてくれた。ピアノのポールとは初めてだったけど素晴らしい。ブレンデルの秘蔵っ子で、品のいい+新鮮なヴェート―ヴェン。彼とは来週タスマニアで今度は3番をやるので楽しみにしてる。 

もう1つのコンサートは本拠地のシンフォニー・ホールで大好きなロッシーニを久しぶりに振る。ヴェルディは初めてだったけど同じ歌詞でこれだけ違うのかというくらい正反対。全く無駄の無い素晴らしい作品。吉松さんの曲はオケにも聴衆にもばかウケして嬉しかった。オケと兄弟関係にある合唱団は約120人と決して多くないが迫力満点!それに加えて透明感があってどんな要求にも答えてくれる柔軟性を持ち合わせてた。それも一重にコーラスマスターのジョナサンの功績だろう。

実はジョナサンとは何度かイギリスで(ジョナサンは5年前にメルボルンにきたそうだ)共演してた。彼はイギリスでは名の知られたコーラスマスターで、僕がハレコーラスと何度か共演した時から僕の事を良く知ってて、今回サチオがくるなら是非とこのプログラムが決まった。というわけでメルボルンではマンチェスター時代の人達との再会の連続だった。

来週はもうおなじみのタスマニア。来月は関西フィルと久しぶりにハイドンの後またオーストラリア。来月はパースからお便りします。

それでは皆さんお元気で! 

      2003年5月24日

PS1 ポール・ルウィスのタッチは本当に美しかった。急にベートーヴェンのピアノ・ソナタ(それも後期の)が聴きたくなって、一息ついた昨日、思いがけずギーゼキングのCDを見つけて買ってきた。ギーゼキングのベートーヴェンはやっぱりしびれる。特に「不滅の恋人」(日本語ではこの言い方でいいのかな)を思って書かれたというOp109、110に思わず涙する。

PS2 ベートーヴェンの話をついでにすると、彼は不幸と孤独と貧しさを一身に背負った気難しい作曲家というイメージが(特に日本で)あるけど、実はそうでもない。20代若くして彼はすでにウィーンでスター。相当額の収入もありオシャレだったし、また女性にもてて相当なプレイボーイだったらしい。そりゃそうだろう、でなきゃあんなにロマンティックで繊細かつ情熱的な曲はかけない。ただし40代半ばから一転する。上記のピアノソナタは「不滅の恋人」と破局を迎えた後の40代に作曲された。ところで晩年に相当な借金があったのは隠し子(それも2人の女性の間に)がいたからとも言われてる。どうも日本人(だけじゃないかもしれないが)はクラシックの作曲家達を聖人にしたがるのでは?

PS3 ベートーヴェンついでにもう1つ。最近トスカニーニのコリオラン序曲のリハーサルをはじめて聴いた。中学生時代NHK・FMで第九のリハーサルを聴いた時とかわらない同じショックを受ける。凄まじい。生意気なこと言うと、僕がいつも苦労する a tempo にする箇所で彼も苦労して何度もやり直してる。ちょっとホッとした。

PS4 今回はタスマニアに行くまで5日間オフがあるのでDVDを持ってきた。「ハリオット」、「ことの終わり」、「ホワットライズビニース」、「風とともに去りぬ」、それに「007」2枚。なんでこんなに持ってきたんだろ・・・・。

PS5 話しが長くなって、先月の関西フィルとの「革命」+日フィルと都響との「運命」2回の話が出来なかった。ごめんなさい。来てくれた皆さん、オケの皆さんありがとうございました!

   
※本ページの写真は藤岡さんのプライベート写真です。
     無断転用はお断り致します。

〜藤岡幸夫さんを応援するWEBの会より〜
すでに届いたファンの皆さんのメールをご紹介しています。是非ご覧下さい!
そして、あなたも是非メール下さいね!


[ HOME ] [ PROFILE ] [ CONCERT SCHEDULE ] [ DISCOGRAPHY ] [ LETTERS ] [ ABOUT THIS SITE ]
[ FROM MANCHESTER ]