今回の藤岡さんのお手紙は、11月の大充実のコンサートのお話です。
今回は写真が海外のものばかりですみませんが、すべて藤岡さんのプライベート写真です。
(写真はもちろん大きなJPEG写真にリンクしてあります。) 。お楽しみ下さい。
感想のメールもお待ちしています。

みなさんこんにちは。

あーぁ今年も後少し。なんだかこうあっという間に時間が過ぎちゃうのってもったいないなぁ。
今思うと学生時代は本当に四季を満喫して過ごせたから思いでも沢山残る。今は気がつくと季節が過ぎ去っちゃっていて、たった一度の人生これでいいのかと自問自答してます。

さて今月(11月)はまず名古屋でメニコン主催のガラ・コンサート。
今までメニコンに御世話になった人が出演する。僕は98年のマンチェスター室内管の日本ツアーで御世話になった。(ちなみに僕のコンタクトレンズもメニコン)。
ソリストは前橋汀子さん、宮本文昭さん、塩田美奈子さん、仲道郁代さん。ソリストのみなさんと美味しい御寿司を食べる。いろんな話しができて楽しかった。

名古屋の後は高松での芸術祭でのベートーヴェンの第九。
この芸術祭は素晴らしかった。合唱団は香川県中から集まった方達に加えて、日本全国から毎年第九を歌いに高松に集まる人達がいて総勢500人弱。特に中学生が参加してるのに感動した。(関西フィルと僕との初の第九でもあった。関西フィルは僕のやりたいことに一早く反応してくれるのが本当に嬉しい。) 香川県の各地の中学校で、歌いたい生徒達が普段は学校の先生と練習して参加してくる。高い音程もいいし、コーラスのカラーに透明感がでてた。合唱団のレベルも高い。お客さんも満席。
このコンサートが何より素晴らしいのは手作りの味がすることだ。舞台上のコーラスの大きい「やま台」も自分達で前日の朝から作る。コンサート後のパーティも盛大だけどすごくアットホーム。食べ物はすっごい豪華。ジャズバンド演奏(アマチュアだけどメチャ上手い)あり、ビンゴゲームありで楽しかったー。

パーティの後はこの演奏会を陣頭指揮してらっしゃるバイタリティ溢れる中西女史が温泉に招待してくださり、次の日の朝は8時半から美味しい、美味しい讃岐うどんを食べに行って、その後市場で買い物して帰ってきた。とにかくこんなにスケールが大きくて一体感のある演奏会って素晴らしい!ずっと続けて欲しいと思うし、そうなるだろうと信じてる。スタッフのみなさんありがとうございました。

高松の後は、東海大付属仰星、それから大東高校のコンサート。 このHPで何度も同じ事いってるけど、僕は中・高生のコンサートが大好き。少しでもクラッシクに親近感を持って貰えたらと思ってる。とにかく僕達の将来は彼等にかかってるのだから・・・・。(関西フィルも相変わらず楽しんで演奏してくれるのがいい。) コンサート後の彼等が送ってくれるメールを読むとやってよかったと本当に思う。公開希望のメールが少ないのでみなさんに読んでもらえないのが残念。

英国に行く直前に貝塚で今年2度目のコンサート。
初めてヴィヴァルディの四季全曲を振った。それにしてもこの曲ってすげェなと感心する。この時代では思いっきり先端いってたんだろうな。スコアを勉強してて感動しっぱなし。
ソロは幸田聡子さん。CDでは美空ひばりで有名だけど、(こういう言い方は失礼かもしれない。ごめんなさい。)でも四季では全く違うを音を聴かせてくれて、それがすごく良かった。ソロを聞きながらポップス系よりクラッシックの方が先天的にあってるひとなんだなぁと感じる。彼女も僕もかなりアヴァンギャルドな四季を目指して面白かった。またこの曲振りたい。
後半はラヴェルのマ・メール・ロアとイヴェールのディヴェルティッシメント。オケは勿論関西フィル。
今回ちょっとしたアクシデントが起きる。この曲は4曲めの「美女と野獣」のためにコントラ・ファゴット奏者を特別に用意することが多い。ところが今回急にその奏者が来れなくなって、急遽2番ファゴットを吹いている星野さんが吹くことになった。彼女この曲全然やったことなかったのに、素晴らしかったー!僕はこの曲随分あっちこっちでやってるけど、モノ足りないことが多い。特に海外では、たいていこの奏者はヒゲをはやしてて、顔つきは獣みたいなのに演奏がおとなしいことが多い。でも今回は少女のような星野さんがまるで野獣のように、強烈なソロを吹いてくれた。かなり楽しかった。ありがとうございました。
貝塚での次のコンサートは来年5月。楽しみにしてます。

 

ボーンマスの中にあるなんでもない教会。ちょっとイタリアっぽい街角で気に入ってる。ボーンマス響は、リヴァプールフィル、バーミンガム等と並ぶ英国を代表するロンドン以外での名門オケ。
ニックとミーティング。特に2003年以降の海外と日本の仕事の割合について話し合う。 
Exeter は思いがけず美しい街だった。このカテドラルはイギリスでもかなり有名らしい。
2日目のコンサートの次の朝。 ちょっと一息。


貝塚のコンサートの次の日、成田からロンドン・ヒースローに着いて、そこから車で2時間ボーンマスへ。
ボーンマス響の客演は3度目。曲目はヴェルデイの「シチリア島の夕べの祈り」序曲、シューマンのピアノ協奏曲、それにチャイコフスキーの「白鳥の湖」のハイライト(本当はシューベルトの9番だったのが変更。残念)。

ピアノはこのHPで以前にも紹介したメルニコフ。(愛称はサーシャ。)  サーシャは前にも書いたように今ヨーロッパで引っ張りだこだ。マネージャーも同じニックで、僕にとっては弟のようなもの。

ところでいつも面白いのが練習前に彼と会うときの最初の彼の言葉がどこでも同じ。彼はいつも彼の曲の前の僕とオケの練習をそっと聴いていて、休憩になると右手を差し出しながら僕の目の前に現れる。何も言わずにニコニコしながら握手して一言めが「タバコちょうだい。」。 おかしいことにスイスでもオーストラリアでも日本でも同じ。一言めは「タバコちょうだい。」 別に僕はヘビー・スモーカーではないけどタバコは持ってる。サーシャは普段吸わないけど僕の顔を見ると吸いたくなるらしい。彼といると楽しくてあっという間に時間が過ぎる。(おかげでHP用の写真を撮るのいつも忘れちゃう。)

さて後半は「白鳥の湖」のハイライト。僕が話しの筋にそって選んだもので約45分。 この曲、すごく良くできた作品なのに、オーケストラだけで演奏される機会は少ないので、定期演奏会でマジに取り上げるのはやりがいがある。オーケストラは怒涛のようにハチキレテた。前回の定期に客演したときは金管の豪華さが印象に残ってたけど(曲はマーラーの1番だった)、今回はそれに加えて、弦楽器のサウンドが深みを増した上にスケールアップしてた。
ところで僕のこと憶えてる楽員はみんな「ウィンドサーフィンに行ったの?」と聞いて来る。ボーンマスは英国でも有数のセーリングスポットで、前回客演した時は時間があったのでウィンドサーフィンに行こうとしてたのをみんな知ってた。今回はそんな時間全く無し。

二日目のコンサートは同じプログラムでExeterというところ。美しい町でした。ニックはこっちのコンサートに来てくれて、今までの僕のコンサートの中でベスト3の1つと喜んでくれた。前にも書いたけどマネージャーのニックは僕にとってコーチのようなもの(詳しくはこちら)。オーケストラで長く第一ヴァイオリンを弾いてたニックの批評はいつも正直でなんでも見抜いていているから、100%信じてる。だから彼が喜んでくれると僕も本当に嬉しい。

というわけで今月もあっという間に過ぎてしまいました。
これから遅れたお返事書きます。
12月は関西各地での第九、クリスマスイヴはシンフォニー・ホールで「くるみ割人形」のハイライト(これ絶対楽しめます。「白鳥の湖」同様僕が選んだもので、ドラマティックな作品です。)他。それから大晦日はリーガ・ロイヤルホテルでディナー・ショー。通常のフルオーケストラのサウンドをディナーの後に満喫していただきます。その後はお客様とカクテルパーティだって・・・・・。なんだか盛り上がりそうで楽しみにしてます。

それではまた!!

         2001年11月25日 

 


PS1 僕はイギリスに住んで12年になるけど、イギリスの典型的な朝食を美味しいと思ったことがない。目玉焼きとトーストはイイ。でも塩から過ぎるベーコン、見てくれにだまされ易い(見た感じは日本人の食べるソーセージだが)変わった味のするソーセージ。味があんまりしない、なんで焼くのかと思う焼きトマト。
リハーサル当日の朝、時差ボケで異常に空腹なので仕方なくこの朝食を食べる。しかし隣のおばあさんの食べる姿を見て発見してしまった。ソウカ!今まで食べ方を知らなかったんだ。ベーコンだけ食べるから塩からいんだ。焼きトマトだけ食べるから変なんだ。つまりベーコンはトマトと一緒に食べる、そうすると塩味も調度良く微妙にトーストとマッチする。目玉焼きにはコショウはかけるが塩はかけてはいけない。そしてソーセージと一緒に口に入れる。なんだ美味しいじゃないかー!今、イングリッシュ・ブレクファストにはまってる。

PS2 リハーサル2日目。サーシャに時間があるから「空を飛ぼう」と誘われる。前にも書いたかもしれないが彼はパイロットのライセンスを持ってる。彼の夢はジャンボの操縦士になることで今でも勉強を続けてる。全く天才のやることにはついていけない。「俺はスチュワーデスさんのいない飛行機には絶対乗らない」と断る。

PS3 「胡桃割人形」の全曲のスコアは持っていないと思ってたのに、持ってた。 しかも全曲勉強した形跡がる。僕の筆跡だ。いつ指揮したのかどうしても思い出せない。こんなこと初めてだ。(以前日フィルと抜粋をやったけど、その時は日フィルのスコアを使ってった)。気持ち悪い。老化現象のはじまりか?

PS4 いよいよ第九の季節だ。人によっては、第九はそんなに演奏するもんじゃないという人がいる。確かにこの曲は一発勝負で演奏する曲だと思う。でも日本人の12月の第九の習慣は悪くないと思ってる。これをきっかけに他のコンサートを聴きにいく人が増える可能性だってあるし、クラシックを身近に感じてもらえるかもしれないからだ。
でも振るのは大変。一昨年第九をやった時はもう二度と振るまいと思った。だから去年は1回も振らなかった。(それに幸運にも仕事で日本にいなかった)。 また新たな気持ちで高松で2年振りに第九を振ったけど、やっぱり難しいものは難しい。 スコアに振り回される。 まだ12月のコンサートまで時間はある。気合が入る。

   
※本ページの写真は藤岡さんのプライベート写真です。
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