今回の藤岡さんのお手紙は、9月のコンサートについての近況です。
今回の写真も藤岡さんのプライベート写真です。(写真はもちろん大きなJPEG写真にリンクしてあります。) 。お楽しみ下さい。
感想のメールもお待ちしています。


 みなさんお元気ですか?
 とうとう夏が終っちゃいましたね。でもまた来年夏が来ると自分に言い聞かせてます。夏は永遠だ!

 さて「NTT・Meet the classic vol.3」に、沢山のお客様ありがとうございました。ホールに入れなかった皆様、本当に申し訳ありませんでした。野洲でのコンサートも満席で嬉しいかぎりです。

  今回は「白鳥の湖」のハイライトがメイン。これは随分前から是非やりたかった企画。とにかくこの曲は組曲以外で素晴らしい曲が沢山ある。(4幕で王子が現れる場面は何度振っても鳥肌が立つ。こんなことはめったにない。)でもバレエの伴奏以外ではなかなか演奏されないんで是非やりたかった 。豊島美雪さんの語りも良かった!「絵本を読むようにオーケストラ曲を」の次回は今年のクリスマスイブで「くるみ割人形」です。場所はシンフォニー・ホール、楽しみにしててくださいね。

  シドニーに行ってきました。オーストラリアを代表するシドニー音大が新しいホールを建てて、そのオープニングシリーズのコンサート。毎晩FM収録が入って盛り上がってました。プログラムはオーストラリア人作曲家Goossensのシンフォニエッタ、旧ソ連から移住してきた作曲家Kosが書いたヴィオラ協奏曲の初演、それにショスタコーヴィッチの5番。
 今回のコンサートは、とにかくソロ・ヴィオラのWolfram Christが良かった!ヴィオラがまるで人間の歌声のようだった。Wolframはカラヤン時代からのベルリンフィルの首席奏者。カラヤンのLDではおなじみの顔。物静かな人だが彼が奏でる音楽は凄い。まるでオペラ歌手のように歌い、完璧なテクニックで甘くささやいたり叫んだり、とにかく恐ろしく難しい曲だったけど彼の音楽に引きこまれて難しいのを忘れてしまうくらい。いい経験をしました。

 後半のショスタコーヴィッチの5番は大好きな交響曲。この曲、いろいろ言われてるけどやっぱり傑作。ここでは専門的な話は避けますが、まずフォルムがしっかりしてる。この構造美はショスタコーヴィッチの作品の中でも特筆もの。それになんといっても3楽章の美しさよ!美しいだけでなく強く、深遠だ。これはショスタコーヴィッチの正直な音楽だと信じるし、最も良く書けてる(交響曲の)楽章の1つだと思う。専門家やマニアは4番や8番etcを評価して(良くワカルけど)5番を評価しない人が結構いるみたいだけど、完成度では5番はダントツだと思ってる。


 

    

シドニー音楽大学の外観。
近くに有名なシドニーオペラハウスがある
新しくできた音楽大学のコンサートホール。美しく音響も素晴らしかった。オーケストラも良かった。プロ並(より少ない)のリハーサルでたいしたもんだ。

 

右側がWalfram。これは2日めのコンサート後で一緒に飲んで楽しかった。コンサートは1日めが良かったが残念ながらFMで放送されるのは2日め。






 
ただ個人的にショスタコーヴィッチで一番好きな交響曲は6番。1楽章はショスタコーヴィッチの本当の生の声が聞こえる。身体が震えるほどだ。2楽章はまるで何かが迫ってくるよう。ティンパニの最強奏後、力を失う。3楽章は「こんなに悲しい。でも音楽が好き」とワザと(?)書かれた、「軽い」と勘違いされ易いアレグロ。以前この3楽章だけをコンサートのアンコールで指揮した人がいたけど、このアレグロは1・2楽章があってこそ意味があると信じる僕にとっては、アンコールにこれを選ぶ感覚には空いた口がふさがらなかった。

 僕が生まれてはじめてプロのオケと正式なコンサートを指揮したのはルーマニアのクルジのオーケストラの定期演奏会。僕は迷わずこの6番を選んだ。東西の壁崩壊直後の時で、オケのプレーヤーは弾いたこともなければ聴いたことも無いというのでパート譜を持ちこんでの演奏会だった。
  練習日初日、ホールの外は雪で真っ白、ホールの中も寒い。最初に1楽章を通して(止めないで)演奏した。オーケストラは初めて演奏するのに、まるで自分達の曲のように悲しく歌ってた。
  1楽章を通し終った後、たくさんのプレーヤーの目に涙が光っていた。「音楽をやっていて本当に良かった」とはじめて思うことがでできた瞬間だった。あの時のプレーヤーの涙は一生忘れない。6番だけでなくショスタコーヴィッチのどの曲を振る時も思い出す、僕にとって大切な大切な思い出です。

  というわけでショスタコーヴィッチは大好きな作曲家なので思わず話しが長くなってしまいました。ごめんなさい。
  来週からまたオーストラリア。ヴァイオリンのチョウ・リャン・リンとの初共演が楽しみです。

  それではみなさんお元気で!

         2001年9月12日 


PS1.以前書いた、城達也のナレーション入りのCD夜寝ながら聞くのに最高。 特に演奏会のあった日は耳鳴りがして困ってたけどこのCDで解消。この人 の声を聞きながら軽いメロディを聞いてるとすぐ眠りにつける。ただ困った事にこのCDが無いと眠れなくなってしまった。今でではどこに行くときも持ち歩いてます。

PS2.野洲のコンサートのリハーサル中、オケのバランスを聴きたくて、舞台から客席の後ろまで走って行こうとしたらすっころんだ。なんと前歯3本折ってしま った。リハーサル後、急いで歯医者に行ったら取れた歯を接着剤でつけてくれて(勿論応急処置ですが)感動してしまった。次の日、顔が凄い勢いで腫れあがって、思わず記念に写真をとった。

PS3.運転しながらFMを聞いてたらサザンの「あなただけを」が流れてきた。 大好きな曲なので思わず車を止めて目を閉じた。桑田は天才!「そういえ ば今年の夏は全然サザン聞けなかったなぁ。」と独り言。

PS4.久しぶりのオフ。歯は折るし、台風は来るしで軽い気持ちでシュワちゃんの 「シックスデイ」を見る。すぐにB級映画とワカル。(設定は2020年頃なのになんで2000年型のメルセデスやプジョーのピカピカの新型が走ってんだよ !)。でも後半にきて「何?主人公がクローンだったわけ?なかなかやってくれるジャン」と驚かされてるうちに「TheEnd」。誰かエンディング説明して!

PS5.さっきアメリカの多発テロのニュースを知った。映像を見て言葉を失った。 僕の知り合いの息子さんは前日までこの貿易センタービルにいたんだそうだ。 背筋が凍りつく。
ご冥福を御祈りいたします。

   
※本ページの写真は藤岡さんのプライベート写真です。
     無断転用はお断り致します。

〜藤岡幸夫さんを応援するWEBの会より〜
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