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「関西フィル第168回定期演奏会」
2004年10月13日 ザ・シンフォニーホール(大阪市)
指揮/湯浅卓雄 (コンサートマスター:
ギオルギ・バブアゼ)
クラリネット/カール・ライスター
フンパーディンク/歌劇「ヘンゼルとグレーテル」より3つの管弦楽曲
「眠りの精の歌〜晩祷〜夢のパントマイム」
モーツァルト/クラリネット協奏曲
エルガー/交響曲第1番
はじめに。
トップページにもありますように、先月第167回定期演奏会でみごとなピアノを披露された園田高弘さんは10月7日に急逝されました。享年76歳。先月の定期演奏会が公開での最後の演奏会だった由。この場ですが、謹んでお悔やみ申し上げます。協演された藤岡さん、オーケストラのみなさん、そして会場を埋めつくした聴衆のみなさんにも大きなおみやげを遺されたと思います。関フィルに寄せられたという「次回はぜひ第3番のコンチェルトを!」の声が幻におわってしまったことは惜しむべきこと。
さて藤岡さんのいないときの関フィルレポート。来年度の定期演奏会の予定もおおむね出ていますが(関フィル公式サイトと後述の「関西クラシック音楽情報」参照)、ある種すごいかも。聴いたことない曲だ、とか言わずに
(藤岡さんの指揮じゃなくても(!)) 行ってみるのもいいかも。話を戻して今回の指揮者は湯浅卓雄さんです。私は生で聴くのは初めてです。湯浅さんというとバジェットプライスの雄との評判も高いNAXOSレーベルとの録音が数多くありますが、この10月にもオネゲルの交響曲・管弦楽曲集と話題作日本作曲家選輯に新譜の追加がありました。藤岡さんのライフワークの一つを別の形で実現している一人、ということになりましょうか。
協演はあの名匠ライスターさんが関フィルに再登場。前回は3年前の藤岡さんとの協演でした。関フィルの公式サイトに曰く「エルガーではなんとオーケストラの『要』としてメンバーに加わり、席を並べます。今回、彼は熱い思いを胸に秘めての来日ノそう、今は亡きある愛弟子の思い出のためにあの席へ座り、奏でるのですノ。」。同じく公式サイトのニュースより。「2003年10月
(中略) 52歳で急逝した寺澤(嘉記)さん。 (中略) 2001年には、ライスターと師弟共演が実現。最後の演奏会はシューマンとブラームス(*)。不思議な繋がりを感じます。通夜・告別式には600人以上の方が訪れました。若い人を愛し、音楽を愛した無骨だが優しい寺澤さんのあまりにも早い死。ご冥福をお祈りしたいと思います。」
(*)「関西クラシック音楽情報」(私設ですが重要なポータルサイトです)コンサートアーカイブより
03.9.19(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
関西フィルハーモニー管弦楽団 オーケストラへの招待シリーズ ドイツロマン派の世界
指揮/阪 哲朗 ピアノ/アナトール・ウゴルスキ 曲目:シューマン/交響曲 第1番 変ロ長調 op.38「春」,ブラームス/ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 op.15
・ ヘンゼルとグレーテル
予習なしまったくのぶっつけで聴きました。作曲者の活躍した年代も知らなかったくらいです。夢心地のたいへん美しい曲が湯浅さんの優雅な指揮から出てきます。この曲を知らなかったのは不覚と言わざるを得ないような曲です。
・ モーツァルト/クラリネット協奏曲
奏者の数も減った(弦が上から8-6-6-4-2、フルート、ファゴット、ホルンが2人ずつ)舞台から、最初にライスターさんがあいさつ(通訳は湯浅さん)。趣旨は”指揮者、オーケストラ、私からこの曲を愛弟子の寺澤さんに捧げます”。湯浅さんからは”エルガーの交響曲で首席クラリネットに座っていただけるのは大きな喜び”。演奏は「ライスターのみがある」という感じで、各楽器からの気の流れがライスターさんに集まってそこから拡がってゆく感じなのですが、その気の流れが全く動的でなく、そもそも流れという言い方も似つかわしくない「止まった時間→永遠と瞬間」のような感覚でした。もはや魔術の領域…否、神秘を超越したというか…。演奏が終わる直前、ライスターさんが左目を一瞬押さえていたような…。拍手の中湯浅さんとライスターさんが抱き合って(ハグ)演奏の成功を讃えます。
・ エルガー/交響曲第1番
事前にNAXOS盤(演奏はBBCフィル)を買っていたので聴いていたのですが、イギリス的陰鬱な(笑)エルガー節っぽい第1楽章だと思っていたら、予想以上に大英帝国の誉れ高き印象の音が出てきました。微妙にスターウォーズのデス・スター+マーラー(苦笑)みたいな第2楽章とラフマニノフ同様饒舌な浪漫をもっとこっそりと語る第3楽章は続けて演奏。要所要所でライスターさんのクラリネットが鈍く輝きます。先月の交響曲同様饒舌にして芳醇な第3楽章でした。先月よりは少し華奢な仕上がりだったかも。主題の回帰がエルガーの出世作「エニグマ変奏曲」を想起する第4楽章は、フンパーディンクと打ってかわって湯浅さんの指揮棒の動きもダイナミックになり、足を時折踏みならし、荒い息がきこえる熱演で終わり。ライスターさんはにこやかに各クラリネット奏者と握手。3回目くらいのコールで湯浅さんがライスターさんに前に来てもらって拍手がまだ続いて…オケは散会。ごったがえすホールの階段では「ハマった〜」「すごいっ」「ライスターさん大物〜」といった声がきこえてきました。
以上です。
付記:会場の声を拾ってここに書いていますが、演奏終了後しばらくは余韻・自分の中での咀嚼のため他の方の感想が聞こえるのを好まないという方もいらっしゃいます。あくまで私が毎度ネタにさせてもらっているだけで、決して場内で感想・評論を声高に語ることを推奨しているわけではないことをお断りしておきます。
2004年10月13日 Fu(ふ)
いつも詳細なレポートありがとうございます。
エルガーは僕もいつかは振りたいと思っている曲なので
本当は聴きに行きたかったのに、行けなくて残念でした。
ライスターさんにはまた是非来て欲しいですね。
藤岡幸夫
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