関西フィル第163回定期演奏会 みどりの日コンサート
2004年4月29日 ザ・シンフォニーホール
指揮/藤岡幸夫
チェロ/古川展生
管弦楽/関西フィルハーモニー管弦楽団
(コンサートマスター/川島秀夫)
プレトーク司会/西濱秀樹(楽団事務局長)
ドヴォルザーク/チェロ協奏曲
J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲第1番「前奏曲」
吉松隆/交響曲第3番
(関西初演)
藤岡さんがなかなか来なかったとかで、西濱さんが残り8分でします、とストップウォッチで計時してのプレトーク。その前に西濱さんの登場からして「いつもながら控えめな拍手ありがとうございます。」、「拍手は大きくてもいいんですよ。」、藤岡さん、吉松さんの登場に対して「最初から大きな拍手でお願いします。」、登場したら「鳴りやまない拍手ありがとうございます」(場内笑続く)と進化したつかみでした。
交響曲第3番は藤岡さんに献呈されていますが、そのいきさつについて藤岡さんは、吉松さんも同行したロンドンでの録音後「空港へ向かうタクシーで言われた」、「最初からしてくれるつもりだったと思う」。吉松さんは「その気はなかった」(場内笑)そうで、思わず決まったということのようです。西濱さん曰く「後悔先に立たず」(場内笑)。
次に、吉松さんは藤岡さんをどう思っているのかについて「一種悪魔的に(振らしてくれ、録音させてくれと)乗り込んできた」、「3番のフィナーレに突っ込みを入れてきた」云々と当初スタンスをつかみかねていたようです。でも3番は藤岡さんの指揮を意識しているんでしょという西濱さんの問いに対して、肯定しつつ「荒削りに見えるけれど、彼は『意外に』緻密で構成が巧い」(場内笑)という評。「献呈を後悔していません」という話。
次は指揮する藤岡さんから印象の話があり、とにかく「体力を使う曲」、「いつまで振れるか」、「4回振ったけれど、もうやりたくない」だとか。といいつつ楽しんでいませんか?
西濱さんからは関西初演にこぎつけたいきさつの説明があり、藤岡さんは関フィル正指揮者就任後すぐに振りたい、と言ったけれど人数、楽器とも手配が大変で今に至った「お金のかかる曲」だそうです。しかしNTTドコモ社の協賛が得られ、さらに場内は満席、立ち見まで出ていました。そこで、藤岡さんから感慨が出て曰く「前半に古川さんが弾くとはいえ、メインが日本の現代音楽でこれだけ来てくれるとは…。」。対して西濱さん「何かの間違いですか?」(場内爆笑)
最後に吉松さんからメッセージを、ということになりました。最初に昔話から。ザ・シンフォニーホールで初めて自分の曲が演奏されたとき、舞台に呼ばれたら案内係に止められたそうです(場内笑)。案内係には作曲者が生きて動いているなんて信じられなかったのだろうという感想で(私にはホールの職員教育が悪い気がしますが)、それから本題「USJに行かずにこちらに来られた方に感謝します。」ということでした。以上プレトークはかつてない再現率でお届けしています(^^;;;)。
チェロ協奏曲
最近はすこし太めになった関フィルの音が、藤岡さんが正指揮者に就任した頃みたいなクリアな音に戻っていた気がしますが、それが先祖返りではなく上向きに螺旋を描いて再構成されたような感じで、格別な出来です。オーソドックス(遅い冒頭という声あり)ながら昨年のエルガーを上回る指揮者、ソリスト、オーケストラが溶けあって壁がなくなったただ音のみの文字通りの「協」奏曲。コールの数は何回だったでしょうか、とにかく多くて忘れてしまいました。また、パートごとに奏者を藤岡さんが立たせていましたが、とにかくオケが上手かった。メインでもない協奏曲では珍しい気がします。古川さんの無伴奏チェロ組曲が奏でられている間、藤岡さんはチェレスタの椅子に腰掛けていました。
交響曲第3番
CDより大きな音だ〜という印象が第一。またどの楽器を使って音をどう出すのかわからない部分がわかりますから、曲にもヴィジュアルが必要なのだというのもわかります。第4楽章はCDでは感じられない意外に速度も遅くて素朴な出来でしたが、後で聞いた話では弦の音を消さないために、ブラスバンド的な盛り上がりをさせずに管楽器に抑えがいるのだとか。こちらも昨年のショスタコーヴィッチを吹き飛ばす大熱演(失言ならすみません)でした。曲の途中で帰る高齢層の方々がごく少数いたことも事実ではありますが文句なしの大成功です。今度は会場係に止められずに(^^;)吉松さんが上がってきて拍手を受けました。
終演後楽屋口にて、藤岡さんと吉松さんにサインをもらう人多数。さらに川島さんも機嫌が良さそうでした。藤岡さんに対して感動した、涙を超越したといった賛辞の他、「頭、すごい、塩を吹いている」「第4楽章の終わりに、よろけていましたよ」という体力を使う曲相応の指摘(?)もありました。藤岡さん曰く「疲れた〜〜」、「恥ずかしい〜」、「日フィルの頃は若かった」。また体力的に振れるかどうかわからないから「後継者をさがそう」。さらに「(ファンから挙がった○○○(氏名自粛)という候補の声に)インテリはだめ、バカでなきゃ、××(ピー)××(氏名自粛)にやらせよう」ということだそうです。吉松ファンの方、指揮者の幅が広がるであろうことに乞期待。それから私からの希望としては交響曲第4番の再演か交響曲第5番の関西初演はいつの日か? です、期待しています。
2004年4月29日 Fu(ふ)
いつも本当に詳細なレポートありがとうございます。
今、Fu(ふ)さんの手紙を読んで、目の前にその時の
コンサートが鮮やかによみがえったような気がします。
ありが たいですね。
またメールお待ちしています。どうもありがとう。
藤岡幸夫