「関西フィル第158回定期演奏会」
7月9日 ザ・シンフォニーホール
指揮/飯守泰次郎 (コンサートマスター/ギオルギ・バブアゼ)
ヴァイオリン/神尾真由子
貴志康一/「花見」「道頓堀」(大管弦楽のための「日本組曲」より)
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
チャイコフスキー/交響曲第1番「冬の日の幻想」
一説には関西の聴衆は非常に保守的といわれる中、今年の関フィルはかなり凝ったプ
ログラムを組んでいます。今回もその中では白眉といえるのではないかと思います。
まず大阪が生んだ鬼才貴志康一。私もはじめて聴きます。これが曲も演奏も素晴らし
かったです。曲はリムスキー=コルサコフ、レスピーギ、それにビミョーにグロフェ
を思わせます。大阪では戦後活躍した大栗裕がいますが(私も経験はCD1枚と生で聴い
たのが1曲だけですが)、そこからコテコテな感じを薄めて洗練された華やかさを足し
た感じでしょうか。演奏は曲にぴたりの鮮烈な色の洪水。関フィルでこれだけの色彩
感がある演奏は久々ではないかと。また飯守さん=渋いのイメージも覆します。弦が
特に多彩な表情で、メタリックな重さと豊かで繊細な叙情が交錯します。他のパート
も良かったですよ。ぜひとも貴志康一は続けてほしいし、あわよくばCDも出してもら
いたいです。
次にメンデルスゾーン。桃色のドレスに頭冠という王女さまみたいな姿の神尾真由子
さん登場。以前チャイコフスキーの協奏曲(スピヴァコフ/ロシア・ナショナル管)で
聴きましたが、この時は実に滔々たる演奏という印象。今回も同じく悠然、曲もゆっ
くりしたテンポで始まります。神経に障るところのない愉しい、あるいは安らいだヴ
ァイオリンだと思いました。
そしてチャイコフスキーの交響曲第1番。予習のためにディスクを回していたのです
が、この曲も良品ですね。たいへん重量感ある演奏でした。ここのところの飯守さん
&関フィルの音の厚みには自然なものがあるようです。どの楽章もいいけれど叙情的
な第2楽章が少し武骨ながら飾らない寂寥感があって頭一つ良かったと思いました。
感想がいつもより短いですが、筆舌に尽くしがたいというのはこういうことをいうの
だと思います。飯守泰次郎さんの至芸は聴く価値あります。以上です。
2003年7月9日 Fu(ふ)
いつも関西フィルの報告ありがとうございます。
今年もよろしく!
藤岡幸夫