「飯守泰次郎 & 関西フィル ベートーベンチクルス 第9回」
・大阪のベートーベンチクルスの歩み
西暦2000年、大阪では大阪フィルハーモニー交響楽団(朝比奈隆)、関西フィルハーモ
ニー管弦楽団(飯守泰次郎)、大阪センチュリー交響楽団(高関健)の3つのオーケスト
ラでベートーベンチクルスが開始。2000年12月に従来の版での大阪フィルの交響曲チクルスが終わり、そしていまや我々はこのコンビでのベートーベンは永遠に聴くことは出来なくなった。ベーレンライター版を使用した大阪センチュリーの交響曲チクルスはゆっくりと進み、現在は第5回の第9を残すのみ(当方8番7番(付:弦楽四重奏曲第13番より「カヴァティーナ」)を聴くが迫力ある格闘技系の指揮ぶりであった)。そし
て交響曲にはベーレンライター版を使用した関西フィルの交響曲・協奏曲チクルスは
千秋楽を迎えた。
と荘重に始めたところで余談を(^^;;;;)。
・軽やかな(?_?)弦楽セレナーデ@大和郡山(3月17日付)
>ところで面白いなぁと思ったのはチャイコフスキーの感想。他のお客さんには随分
濃い演奏ですねといわれたので・・・。
これは安易に?参照基準の違いかもしれないです。大阪フィルの思いきり骨太な演奏(
指揮者はいうまでもない)を2回聴いているもので。
関西フィル ベートーベンチクルス 第9回「ベートーベンの平安」 指揮/飯守泰次郎
2002年3月30日 いずみホール
「アテネの廃墟」序曲
ロマンス ヘ長調 ロマンス ト長調 (ヴァイオリン/木嶋真優)
交響曲第6番 「田園」
恒例プレトークは冒頭の花見の話題がつかみ損ねになり西濱さんは不調かと思いまし
たが、飯守さんのトークが西濱さんを圧倒しました。一編の随筆を口述筆記させたよ
うな文学的な仕掛けになったのが印象的。西濱さんのトークはこんなもので自分は引
き立て役(休憩時間の弁)という役割はこれで十分ということでしょう。「ベートーベ
ンの平安」という今回は飯守さんは客席にベートーベンに平安はあったかと問いかけ
、一生戦った彼には平安はないと言い切り、それから実生活に直結しているにもかか
わらず交響曲第6番が書ける不思議とベートーベンの心の平安といった語りをしまし
た。曰く、交響曲第5番で創造力の毒素を出し切ったあとに6番の澄み切った世界があ
る、5番の次に7番は書けないのだ、と。またチクルスを総括して、今回のようなプロ
グラムで終わることは至難で、交響曲3、5、7、9番のようにどっかーんと出来ないも
のを敢えて、とのこと。
オーケストラは例によって対向配置で、今回は客席から見て左から第1ヴァイオリン
、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリン、チェロとヴィオラの後ろが2管の木管楽器、
木管の右が金管楽器、金管の奥がティンパニ、コントラバスが木管楽器の後ろ即ち中
央奥というウィーンの方式でした。コンサートマスターはギオルギ・パプアゼさん(
ゴギさん)でした。
・「アテネの廃墟」序曲
演奏機会の少ない珍しい曲で飯守さんの解説では大河ドラマか映画音楽とのこと。確
かに冒頭はまさにNHK総合日曜夜8時という感じです。あとはベートーベン節という感
じですが、唐突な終わりは無理矢理1分30秒に編集されたドキュメンタリーのテーマ
音楽みたいでした。
・ロマンス ヘ長調 ロマンス ト長調 (ヴァイオリン/木嶋真優)
橙色のドレスの木嶋さんが登場。どちらの曲もゆっくりとしたテンポでした。練習の
ためにゆっくり弾いているのではないかというくらいでしたが、オーケストラはなか
なか盤石な感じでした。木嶋さんの演奏は相当な生硬さはあるものの、なかなかはま
った癒し系と思う人は多いのではなかろうかと思いました。
・交響曲第6番 「田園」
指揮者とオーケストラの関係が十分にこなれてきたのか、はたまた曲のせいか緊張感
という印象のない感じで曲はスタートしたと思いました。第2楽章はゆっくりゆっく
りとした流れ、第3楽章は一転チェロを筆頭にギシギシビリビリという締め上げた演
奏ながら金管が暴走気味で荒れた感じかなと思いました。あと第4楽章の嵐よりその
前のコントラバスによる嵐が迫ってくるところが良くて本当にゾクゾクする感じ。第
5楽章は舞台の上に音が背が高い直方体のようにそびえる感じだと思いました。音の
溶け合い方も素晴らしく見事でした。速度を落としつつ飯守さんがかなり大きな唸り
声を上げ、それから曲は終了。
こうしてベートーベンチクルスは成功裏に終わりました。
2002年3月31日 Fu(ふ)
いつもありがとうございます。
「アテネの廃墟」懐かしいなぁ。大昔、一年中この曲
を勉強してたことがあります。
またレポートよろしくお願いします。
藤岡幸夫