ライヴ感のあるクラシックに出会えた日
  
 藤岡幸夫さんのお名前は「音楽の友社」刊『クラシック・ディスク・コレクション301』の「指揮者が語る現代音楽」でBBCの指揮者として活動されていることは知っていました。演奏を依頼される現代音楽の作曲家と藤岡さんとのやり取りが、ざっくばらんに書かれていて、興味深く読ませていただきました。勿体ぶらず、結構笑える箇所もありました。
 それから3年余りの時が過ぎ、先月末知人より届いた一通のコンサートの案内を見て驚きました。何と藤岡さんが身近な関西フィルにおられてコンサートを近日中にすると!
 私、音楽好きで、社会人になってから特にクラシックが好きになりました。時々コンサートに行ってます。チェコフィル、京響、ドホナーニ/クリーブランド管弦楽団etc.
 でも、ライヴと言えるようなエキサイティングな公演になかなか出会えません。CDの再生・「優等生」という感じの演奏じゃあ満足できない!
 だから、オーディオにはしってました。W.フルトヴェングラー、F.コンヴィチーニ、J.カイルベルト、H.クナッパーツブッシュ、V.ノイマンなどの故人から、K.クライバー、ソロではM.J.ピリスなど現役までいろいろ聞きます。
これまで正直言ってコンサートにあまり期待していませんでした。
 でも、あの藤岡さんなら何かやってくれそう、クラシック音楽を「床の間の飾り物」からノリノリのライヴに仕上げてくれるかもしれない、まだ会ったこともないのに、そういうインスピレーションが働いたんです。
 そう、日本ではまだクラシック音楽が「よそ行きの服」で日常茶飯事になってないと思うんです。戦中のドイツ人なんてベルリン空襲で爆弾が炸裂する中でもフィルハーモニーホールでモーツアルトの41番を聞いていた。
私はとある機会にウィーンのコンチェルトハウスに行き、ベートーベンの7番をウィーンシンフォニカーの演奏で聞きました(指揮者はだれだったか良く覚えていません)が、アンコールを要求するカーテンコールの凄まじいこと!足踏みで床をドタバタ鳴らすんです。
話がわきにそれましたが、ということで子供2人連れて大阪まできました。


  <第一部・サックスとの協演>
 須川さん、失礼ですがあまりよく存じませんでした。カラヤン以前の亡くなった方の演奏というか録音ばっかり聞いているオーディオマニアですから。
 演奏がはじまった途端、ハイテンションなサックスの演奏に「うっ」ときました。
オケも「フォン」とハモるような弦じゃない、音がシャープでスピード感がある、まっすぐに飛んでくる、全身の血が熱くなる「何だ、この演奏は!」びっくり。
 はじめから「グラナダ」までスペインと係わりのある曲でしたね。パーカッションの味付けがスパイスになってました。生前はアルゼンチンタンゴの異端者扱いだったピアソラも今では日本ですっかりお馴染みになっています。私も彼のディスクは持ってますが、ピアソラが分かりませんでした。
 須川さんと藤岡さんは初対面の私に見事に曲の生命を見せてくれました。
 スペイン風、この延長線上には狂詩曲「スペイン」やビゼーが登場するのかな?と思いました。

  <第二部・サン・サーンス交響曲第3番 オルガン付き>
 どちらかというと、この曲がお目当てで大阪に来たようなもんです。 自宅でE.アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団演奏のサン・サーンスの交響曲3番のアナログディスクがあり、ぜひ一度、コンサートで聞きたいと思ってました。オーディオという行水ではなく、生演奏で音の洪水に溺れてみたいと前々から思ってました。
 身構えてアイン・ザッツに耳を澄ましました。私は歯をくいしばっています。出だしの1分余は身がよじれるような気がしました。
 K.クライバーの92ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートの出だしの「ウィンザーの陽気な女房達」もそう(CDで聞いただけで、コンサートに参加はしていません。念のため)です。精神を集中して指揮している、藤岡さんのそういう気迫が私にも伝わります。ベートーベンの交響曲3番「英雄」の第一楽章の出だしは大砲を打つような強奏で始まるのでびっくりしますが、案外気は楽です。ピアニッシモの出だしは精神が集中して体に悪い。
 音量があがってきた、ふーと息をつく。そして空気がふるえるオルガンの轟き。第一楽章半ば、オルガンの演奏が一時止むと、娘は疲れたのか、静けさの中で心地いいのか寝てしまいました。
 第二楽章。お馴染みの主題で曲は始まりました。息子はスイングしています。再びオルガン。大太鼓とシンバルが同時に炸裂。パーカション群は女性ですが力強く迫力に満ち、絶妙の間合。打楽器は待ちが長く、その瞬間が命ですからね。
 かくして夢中で嵐のように演奏はすぎていきました。アルゼンチン、グラダナ、サン・サーンス(フランス)と熱いラテンの血を見せてくれました。
 藤岡さんって背が西洋人並に大きいけど、実に素早い身体の動きで指揮しますね。全体をくまなく見て的確に指揮されているようです。「正確だけど、熱い」って難しいですよね。でも、現実にそうなっている。
 次もぜひ行きたいと思うようになりました。
 大阪の聴衆ってダイレクトな反応があっていいですね。京都は良く言えば「奥ゆかしい」、悪く言えば「へヴィ」。ミュージシャンも京都のライヴはしんどいと思います。
 藤岡さんはショスタコーヴィチをよく演奏されると聞いています。交響曲5番「革命」も聞いてみたいです。
 あれもこれも好きなこと言いましたが、以上、3/3の感想でした。




               2002年3月6日 三木 務




ありがとうございます。
関西フィルと藤岡は毎回ライヴなコンサートを心がけてるので
嬉しいですよ。
ショスタコ―ヴィッチの5番?
必ず近いうちに演奏します。お楽しみに!







藤岡幸夫

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